私は実機を視聴せずにヘッドホンを買うことがあるのですが、購入前にレビューを見ていて抱いていた印象と、実際に使ってみて感じる印象が違うことが良くあります。

この原因の1つは、ヘッドホンなどのレビューの「音質」に関する言葉の定義が曖昧で、人によって使い方が違うからだと思います。

できるだけ分かりやすくヘッドホンのレビューをするために、自分「音質」に関する言葉の意味を自分なりに一度整理したいと思いますが、もし間違いなどあればご指摘いただけると有り難いです。


  • ◆「解像度」「分離」

ヘッドホンなどのレビューで良く見かけるのが「解像度が高い!」とか「音の分離が優れている!」というような言葉です。

「解像度」というのは画像の場合には画素数のことを意味するので、素直に考えると音楽の場合にはサンプリングレートやビット深度(44.1kHz、16bitなど)を意味するような気がします。

しかし、ヘッドホンから出てくる音はアナログですし、ヘッドホンを通すことでサンプリングレートが上がったり下がったりすることはありません。

そのため、「解像度」という言葉は、「他のヘッドホンでは聞こえない音が聞こえる」「細かく繊細な音まで聞こえる」「音の始まり、消え際がはっきり分かる」という意味で使っている人が多いと思いように思います。

「解像度」と同じような意味で使われることが多いのが「分離」とか「分離感」という言葉だと思います。

この「分離」という言葉は「楽器やボーカルの音が分かれて聴こえる」「今まで2本だと思っていたギターが4本だった」「コーラスは1人だと思っていたけど、4人分入っていた」みたいな感じで使っている人が多いと思います。

基本的に【「解像度」が高い ≒ 「分離」が優れている】という意味で使われることが多いと思いますし、「解像度」や「分離」が優れているヘッドホンは、振動板の反応が良いものや、共鳴が少ないものが多いと思います。


  • ◆「定位」「広がり感」「奥行き感」「空間表現力」「音場」

音像の「左右の位置」や、音像の「近い・遠い」の分かりやすさを「定位」やと言うことが多いと思います。

聴く位置(座っている位置・リスニングポジション)によって聴こえ方が違ってくるスピーカーと違って、耳に固定して音を聴くヘッドホンは、比較的左右の「定位」は問題になりにくいと思います。

音像の「近い・遠い」の分かりやすさについては、「広がり感」「奥行き感」「空間表現力」「音場」という言葉で表現している人も多いと思います。

全ての音が近くで鳴っているように聴こえる(≒音場が狭い)ヘッドホンの代表はソニーのMDR-CD900STでしょうか。

「広がり感」「奥行き感」が分かりやすい(≒音場が広い)ヘッドホンとしては、開放型のAKGの700シリーズなどが有名ではないかと思います。

MDR-CD900STの近い音に慣れている人は、AKGの700シリーズの音は「遠くて音がぼんやりしている」と感じたりするかも知れません。



  • ◆ダイナミックレンジ

ダイナミックレンジは大きな音と小さな音の差のことで、ダイナミックレンジが広いほうが音に迫力を感じたり、変化を感じやすいです。

イヤホンとヘッドホンを比べた場合、ヘッドホンのほうがダイナミックレンジが広いということは良くあると思いますが、ヘッドホン同士の比較でダイナミックレンジは似たり寄ったりではないでしょうか。

振動板の反応が良いヘッドホンのことを「ダイナミックレンジが広い」と言っている方もいるような気がしています。

また、低音域(特にスーパーローと呼ばれるような低音)がはっきり出ているヘッドホンは、音量差が大きく感じるため、低音が強いヘッドホンについて「ダイナミックレンジが広い」と言っている人もいるかも知れません。



  • ◆周波数特性

レビューを見ていると、「高音域」「中音域」「低音域」の「強い」「弱い」(周波数特性)を「音質」と同じような意味で使っている人も結構多いと思います。

例えば、「低音が弱くて音質が悪い」とか、「高音域が弱くてこもっているように聞こえているので音質が悪い」みたいなレビューです。

その他に、周波数特性に関しては「音が抜けない」とか「キンキンと耳に刺さる感じで痛い」というように表現されることもあると思います。

基本的に、周波数特性は好みや用途に合っているかという問題であって、低音・高音が小さく聞こえるから音質が悪いということではないと思います。

ただ、無理に低音を強調したようなヘッドホンでは、低音やその倍音によって中音域・高音域の音を邪魔して、解像度を酷く下げてしまっているものもありますし、低音が共鳴して音がぼやけてしまっているようなものもあります。

また、一口に「低音が強い」とか「高音域が強い」と言っても、人によって違う周波数帯のことを言っていることが良くあるので、なかなか困ります。

「低音」にも、音というよりも「圧力」に近いスーパーロー(20~80hz)なのか、200hzくらいのことを言っているのか、それとも低音の倍音のことを言っているのか、人よって違うことが多いと思います。

「高音」はもっと幅があって、女性の高い声くらい(2000hz)のことを言っているのか、ハイハットやシンバルの4000hz~6000hzの音のことを言っているのか、6000hz以上の音のことを言っているのか、人によって違うと思います。



  • ◆「音が抜ける」

ヘッドホンのレビューで「音が抜ける」という言葉も目にすることが良くあります。

一般的に音楽の演奏者にとって「抜ける音」というのは「他の楽器の音に埋もれずに前に出てくる音」のことを意味することが多く、「そのドラムのスネアの音が抜けてていいね」とか、「ギターの音が抜けてないから歪みを弱くして」というように使われたりすることがあります。

このように、「抜ける」というのは特定の楽器の音について言うことが多いのですが、レビューの中で楽曲として全体の音について「抜けている良い音」というような文章を見ると「どの楽器の音が抜けているのか?」という疑問がわいてきます。

多くのレビューでは「抜ける音」というのは、特定の楽器の音の話をしているのではなく、楽曲全体と通して高音域や中音域の特定の周波数の音が聞こえやすくて透明感があるとか、聞き心地が良いという好みの話をしていることが多いように思います。


  • ◆「音の立ち上がり」「消え際」「スピード感」

最近レビューの中で増えてきたような気がするのが「音の立ち上がり」「消え際」「スピード感」という言葉。

ヘッドホンによってスピードが変わる訳はないので、一見、意味不明な感じもしますが、解像度やダイナミックレンジが高いヘッドホンや、音場が狭めのヘッドホンで音楽を聴くと音の歯切れが良く、リバーブなどの消え際がハッキリと聴こえたりします。

そして、歯切れが良く聞こえる音はスピード感があるように感じられます。

なので、「音の立ち上がりが良い」「消え際が良い」「スピード感がある」というのは、解像度、ダイナミックレンジ、音場のことを言っていることが多いのではないかと思います。



  • ◆着け心地

音質とは基本的には関係はありませんが、実際にヘッドホンを購入する際に重要な要素が「着け心地」です。

良い音でも、すぐに耳が痛くなるようなヘッドホンは辛いです。

耳の形との相性もあると思いますが、個人的にはソニーのモニターヘッドホンは、耳が痛くなることが多いです(MDR-CD900STやMDR-M1STなど)。



  • ◆インピーダンス

ヘッドホンの「音質」と微妙に関係してくるのがインピーダンスだと思います。

インピーダンスは、正確には電圧と電流の比のことですが、ヘッドホンに関しては簡単に言えば「音が出やすいか、出にくいか」という意味で使われていることが多いと思います。

インピーダンスの高いヘッドホンはスマホなどに繋いでも小さくて迫力のない音しか鳴らないため、きちんとした音を聴くためにはヘッドホンアンプを用意したりする必要がありますが、一般的にはノイズに強いと言われています。

インピーダンスの低いヘッドホンはスマホなどでも簡単に鳴らすことができます。



以上、ヘッドホンの音質などのレビューに関する言葉をざっと整理してみました。

今後、ヘッドホンなどのレビューをする際には上記の内容を参考にしながら書きたいと思います。