ふるさと納税の制度を使うと自分の所得に応じた限度額の範囲内で寄付をすることで、食品や雑貨など様々なものが格安(自己負担2000円)で入手できます。



私は数年前からヘッドホン、イヤホン、PCMレコーダーなど、音楽制作に使うものもふるさと納税の返礼品でまかなってきました。

SONYのメジャーなモニター用のヘッドホン・イヤホンが揃ったので、それぞれのレビューや比較をしてみたいと思います。



まず、現時点でふるさと納税で入手できるSONYのヘッドホン・イヤホンは以下のとおりです。

MDR-CD900ST(モニターヘッドホン)
→寄付額 6万4000円 でもらえる

MDR-EX800ST(イヤホンモニター)
→寄付額 8万0000円 でもらえる

MDR-M1ST(モニターヘッドホン)
→寄付額 11万2000円 でもらえる

MDR-Z1R(ステレオヘッドホン)
→寄付額 66万7000円 でもらえる


この中で群を抜いて高額なのが「MDR-Z1R」の66万7000円ですが、自己負担2000円で66万7000円の寄付をするためには年収2200万円~2300万円くらいである必要があります(扶養家族の数などによって変わります。)

なので、ふるさと納税で「MDR-Z1R」を入手できるのは、一部の人に限られます。



他方、「MDR-CD900ST」、「MDR-EX800ST」、「MDR-M1ST」は、自己負担2000円の範囲で入手できる人は多いと思います。

MDR-CD900ST(モニターヘッドホン)
→寄付額 6万4000円 → 年収525万円~程度が目安

MDR-EX800ST(イヤホンモニター)
→寄付額 8万0000円 → 年収625万円~程度が目安

MDR-M1ST(モニターヘッドホン)
→寄付額 11万2000円 → 年収725万円~程度が目安


※限度額については、扶養家族の人数やその他の控除額などによって変わります。総務省のウェブサイトのリンクを貼っておきます。






私は一昨年に「MDR-CD900ST」を入手し、昨年は「MDR-EX800ST」と「MDR-M1ST」を入手したので、それぞれについて感想のようなものを整理していきたいと思います。




  • ◆MDR-CD900ST(モニターヘッドホン)

MDR-CD900STはどこのスタジオにも置いてあることが多いですし、持っている人も多いと思いますので、詳細なコメントは不要かも知れません。

他の方のブログやYoutubeを見ていると「CD900STは音質最高」と絶賛するような内容のものがある一方で、「CD900STは時代遅れだから使うべきでない。使っている奴は情弱」みたいな内容のものもあったりします。

確かに今ではCD900STより性能の良いヘッドホンは沢山ありますが、「買ってはいけない」と言われるほど悪いヘッドホンでもなく、手元にあると色々と使い道があって便利なヘッドホンであるということは間違いないと思っています。




  • ◇音の分離(解像度)

900STはモニターヘッドホンとしてロングセラーになっているだけあって、音の分離はそれなりに良いです。

ただ30年以上前からあるモデルということもあり、最新のモニターヘッドホン(YAMAHA HPH-MT8など)に比べると繊細さには欠けていて、人によってはコストパフォーマンスが悪いと感じるかも知れません。

コストパフォーマンスを重視する人にとっては、現時点でふるさと納税の対象になっていない機種ですがMDR-7506(1万円ちょっと)のほうが満足度が高いような気がします。





  • ◇音場(定位・広がり感・奥行き感・空間表現)

MDR-CD900STの音場は狭く、耳元で鳴っているような平面的な音で、音の距離が近いです。

「細かい音を聞くためにスピーカーに耳を押し当てた時」というイメージに近いです。

そのため音をチェックするという用途では使いやすいです。

また、音が近い分、声やギターの音が聞き取りやすく、ボーカルやギターの練習やレコーディングの際に演者が使うという用途では今でも便利です。

レコーディングスタジオに行くとCD900STを渡されることが多いです。

原音忠実再生やピュアオーディオを追求しているような人からすれば、CD900STをリスニング用のヘッドホンとして利用することなんて考えられないと思いますが、人によってはCD900STの耳元で鳴っているような音が好きで音楽鑑賞に使っている人もいるみたいです。

私も酔っ払っている時や疲れて耳の感度が落ちている時は、他のリスニング用のヘッドホンよりも、CD900STの平面的で高音が尖ったような音のほうが心地よいと感じることがあります。






  • ◇周波数特性

MDR-CD900STはフラットと言われることが多いですが、高域のシャリシャリとした音が目立ちます。

他方、低域が弱いと言われることも多いですが、個人的には低域もちゃんと聞こえる部類のヘッドホンだと思います。

個人的に、曲の制作のミックスの段階でCD900STを使ってバランスを取ると他の環境で聞いても違和感がない状態になることが多く、そういった意味では自分の中での「フラット」の指標を決める基準として使いやすい機材だと思います。

「古いヘッドホンだけど慣れている900STを使うと、それっぽく仕上がる」という理由で手放せずにずっと使っているという人も少なくないと思います。




  • ◇着け心地

MDR-CD900STの着け心地は悪いです。

耳の形との相性もあると思いますが、イヤーパッドが耳たぶを圧迫するような形状になっているため、人によっては「最悪」の着け心地だと感じる人もいると思います。

他の記事でも書きましたが、「MDR-7506」のイヤーパッドに交換すると、着け心地が少し改善します。
(両耳で2200円程度)




900ST と互換性のあるYAXI (ヤクシー)のイヤーパッドも評判が良いですが4000円弱と結構なお値段がします。







  • ◆SONY MDR-EX800ST(イヤホンモニター)

MDR-CD900STは着け心地が悪いため、気軽に長時間装着できるイヤモニ(イヤホンモニター)がないかなと思っていたところ、イヤモニのMDR-EX800STもふるさと納税の対象になっていることを知り、試しにMDR-EX800STを入手してみました。



  • ◇音の分離(解像度)

個人的にイヤホンはヘッドホンの下位互換だと思っていたのですが、MDR-EX800STの音の分離感はかなり良いです。

MDR-CD900STや後述のMDR-M1STからEX800STに付け替えた直後であっても、あまり違和感はありません。

また、一般的にカナル型のイヤホンの場合、タッチノイズ(ケーブルが服と擦れたりして発生するガサガサ音)が気になる場合が多く、個人的にはカナル型は好きではないのですが、MDR-EX800STはケーブルのハンガーのような部分を耳にかけるタイプになっているため、タッチノイズがほとんど気になりません。

もっとも、かなり細かい音やノイズのチェックをする場合には、やはりMDR-CD900STのほうが小さな音まで聞き分けることができます。

作曲の時には長時間着けていても疲れにくいイヤモニ(MDR-EX800ST)を使って、細かい音をチェックしたりバランスをとる時にヘッドホン(MDR-CD900ST、YAMAHA HPH-MT8、MDR-M1ST)を使うという使い分けも良いと思います。

個人的には効果音を大量に作る時などには、軽いイヤモニ(MDR-EX800ST)を使って作業することが多いです。

なお、MDR-EX800STは、外部の音の遮断性はあまり良くないので、外で使うという用途にはあまりおすすめできません。



  • ◇音場(定位・広がり感・奥行き感・空間表現)

EX800STはイヤホンなので音場は狭いです。

一般的なカナル型のイヤホンとあまり変わらないと思います。




  • ◇周波数特性

レビューの中にはEX800STMDR-CD900STと周波数特性が似ているという記載がありましたが、EX800STCD900STの周波数特性全然違うと思います。

MDR-EX800STはカナル型のイヤホンということもあり低域の音がしっかり出ています。

またCD900STのような高音のシャリシャリ感もありません。

MDR-M1STに比べるとスーパーローと言われるような低音は弱いですが、MDR-EX800STの周波数特性は、CD900STよりもM1STに近いと思います。

EX800STのようなカナル型のイヤホンは、イヤーピースが耳にどれだけ密着しているかによって、低音の聞こえる量や質感は全く変わってきます。

EX800STに限りませんが、基本的にイヤーピースは「S」「M」「L」の3種類しかないため、「SとMの中間」「MとLの中間」「Lよりも大きい」の耳のサイズの人はイヤーピースが耳に密着せず、そのために低音が小さく感じる、ということもあるのではないかと思います。

EX800STのレビューの中で、低音の量に関する感想が様々である原因の1つは、この点にあるのではないかと思います。

低音をしっかり聞き取ったり確認するための用途で使いたい、ということであれば、後述のMDR-M1STのほうがより正確に低音を把握できると思います。



  • ◇着け心地

MDR-EX800STはイヤホンなので、ヘッドホンと違って軽いですし、長時間付けていても耳が痛くなるということもありません。

ただ、ケーブルのハンガーのような部分を耳にかけるタイプになっているため、人によっては耳の上の部分に違和感を覚える人もいるかも知れません(私は違和感はありません。)

※SONYのウェブサイトに装着した時の写真があります。




また、眼鏡をかけながら使用することも可能ですが、眼鏡の「つる」(耳にかける部分)の上にEX800STのハンガー部分が重なるので、眼鏡をかけた状態だとハンガー部分の引っ掛けが甘くなり、若干イヤホンが外れやすいです。

MDR-EX800STを入手する前は「ヘッドホンよりも気軽に使えるイヤモニがあったら良いな」と思っていたのですが、EX800STを使う場合には、①左右を確認する、②ケーブルのハンガー部分を耳の形の合わせて折り曲げる、③耳に付ける、という3つの作業が必要になって、少し面倒です。

ヘッドホンの場合は、左右の向きを同じままにして壁などに掛けておけば「左右を確認する」という手間もありませんし、ケーブルのハンガー部分を調整するという手間もないので、付け外しの手間に関してはEX800STよりもヘッドホンのほうが楽です。

EX800STを付けながら作業をしていると「キッチンに飲み物を取りに行きたいけど、イヤホンを外した後にまた付けるのが面倒だな・・・我慢しよう」という感じになることもあり、そこまで「気軽に使えるイヤホン」という感じではありません。

ただ、長時間使っていても疲れにくいので、時と場合によってヘッドホンと使い分けるのが良いと思います。




  • ◆SONY MDR-M1ST(モニターヘッドホン)

MDR-M1STは2019年に発売された比較的新しいヘッドホンです。

前々からM1STの音を聴いてみたいと思っていたですが価格もやや高め(3万円超え)で、M1STと比較されることの多いYAMAHA HPH-MT8も持っていたので、なかなか購入する気になれませんでした。

しかし、ふるさと納税で実質自己負担2000円で入手できることが判明したので、試しに返礼品としてもらってみました。

結論から言うと、MDR-M1STは「着け心地以外」はかなり良いヘッドホンだと思います。

MDR-M1ST よりもYAMAHA HPH-MT8のほうが良いという人も多いですが、個人的にはどちらかというとMDR-M1STのほうが好みです。



  • ◇音の分離(解像度)

最近発売されたヘッドホンということもあり音の分離はかなり良いです。

特に低音(キックやベース)の質感を把握するのには便利です。

また、音の分離が良い割には聴き疲れもあまり感じません。

ただ、MDR-M1STは低音が良く聞こえる分、中高音の細かい音の把握がやや難しいです。

中高音の細かい音をチェックするのであれば、MDR-CD900STYAMAHA HPH-MT8のほうが使い勝手が良いと思います。



  • ◇音場(定位・広がり感・奥行き感・空間表現)

音場は特に広くもなく、狭くもない、という印象ですが、MDR-CD900STよりはMDR-M1STのほうが、空間的な広がりが感じられます。

他方、AKGの700シリーズなど開放型のヘッドホンに比べると当然音場は狭く、広がり感・奥行き感もあまりありません。

MDR-M1STの対抗馬であるYAMAHA HPH-MT8と比べても、HPH-MT8のほうが空間の位置的な把握やリバーブの消え際の把握がしやすいです。





  • ◇周波数特性

低域がしっかりと出ていて、低域の輪郭や質感が把握しやすいです。

用途によるんでしょうが、個人的にはこのくらい低域がはっきり聞こえるほうが好みです。

着け心地の悪さを除けば、リスニングヘッドホンとしても使える今風の音だと思います。

低音がしっかり把握できるので、ベースの練習や録音をする時にはCD900STよりも自分の演奏が聞き取りやすいと思います。

日本の住宅事情を考えると、自宅でベースアンプをブリブリと鳴らせる環境にある人は少ないと思いますので、ベーシストにとっては手元に置いておくヘッドホンとして選択肢の1つに入れても良いのではないかと思います。

曲制作のミックスにも使えるとは思いますが、低音が強い分、慣れていないと他の環境で聞いた際に低音がスカスカになりがちなので注意が必要です。

個人的には音のバランスを取る時には、CD900STやスピーカーのほうが使い勝手が良いと思います。



  • ◇着け心地

個人的にMDR-M1STの最大の不満は「着け心地」の悪さです。

着け心地が悪いというよりも、ヘッドホンのスピーカーのプラスチック製の部品が耳たぶに当たって痛くなる、ということが良くあります。

装着位置をずらすと痛みが生じない場合もあるのですが、最初のうちは大丈夫だと思っていても、15分くらい使っていて「痛い!」となることがあって、一度痛みを感じてしまうと、それ以降は着けているのが辛くなります。

自分の耳の形との相性もあると思いますので、全然平気な人もいると思います。

着け心地だけであればHPH-MT8のほうが良いですが、MDR-M1STのほうがHPH-MT8よりも全然軽いので、疲れやすさという面で比較すると、MDR-M1STのほうがまだマシだと感じる人もいると思います。

個人的には今持っているヘッドホン(900ST、HPH-MT8、K702、K240MK2)の中で、好みの音なので、一番使う機会が多いです。

価格は高めですが、価格相応に性能は良いですし、特性が好みに合えば満足度が高いヘッドホンだと思います。

以前はヤマハのHPH-MT8が安かったので、MDR-M1STよりもHPH-MT8のほうがコストパフォーマンスは良かったと思うのですが、最近、ヤマハがHPH-MT8を含むプロオーディオ製品の出荷価格の値上げをしたので、MDR-M1STHPH-MT8の価格差はほとんど無くなってしまいました。

両者の主な違いは、上記のように空間表現、周波数特定、着け心地にあるので、どちらを買うか迷っている人は、実際に試聴をしてみて、自分の好みのほうを買えば良いのではないかと思います。



  • ◆まとめ

ふるさと納税の返礼品として「MDR-CD900ST」、「MDR-EX800ST」、「MDR-M1ST」の3つを入手しましたが、M1STEX800STは日常的に使っているので、入手できて良かったと感じています。

ちゃんとスピーカーを鳴らせる環境があればヘッドホンは1台あれば十分だと思うのですが、マンションの部屋だと左右のバランスの微妙なずれや共鳴が気になりますし、エアコンなどの空調の音も気になるので、安定して使えるヘッドホンが複数あったほうが何かと便利です。

また、作業に慣れている人は自分の好みのヘッドホン1つで何でも出来てしまうんでしょうけど、私は人間の耳を信用していないので(時間帯や体調によって聞こえ方は変わってきます)、ヘッドホンが複数あると安心です。

900STは他の2つを入手した後は使用頻度が減ってしまいましたが、手元にあると何かと便利なヘッドホンなので今後も売らずに持っておこうと思います。