BLACKSTAR「ID:CORE V3 STEREO 10」を使い始めてしばらく経ったので、個人的に感じた良いところと悪いところを整理してみたいと思います。
- ▲良かった点▲
- ■音質
肝心の音質ですが想像していたよりも良かったです。
「1万円前後の安いアンプでこんなに良い音が出るんだ」と少し驚きました。
一昔前にはこの価格・この大きさで、こんな音を出せるアンプは無かったと思います。
スピーカーはそれ程大きくないものの、箱が大きいので、小型アンプにありがちな貧弱な音ではなく、ちゃんとアンプから出した音がします。
ただ、どのチャンネルを選んでも「BLACKSTAR」っぽい乾いたような軽い音がします。
これは好みだと思います。
YAMAHAのTHRの音が「こもっている」と感じる人には「ID:CORE」のほうが華やかで心地よいと感じると思いますが、「ID:CORE」の音は「平面的」「薄っぺらい」と感じる人もいるかも知れません。
またEQを全て12時にしている状態だとブリッジミュートの「ズクズク」感がいまいち足りない感じがするので、その場合にはEQでBASSとRESONANCEを上げる必要があるのですが、BASSとRESONANCEはPCに繋がないといじれません。
それから、「ID:CORE」の音はFly3と同様にコンプレッサーがかかったような音で「弾きやすい」と感じる人もいると思いますが、歪ませた音については「少し平面的な音」「ピッキングニュアンスが伝わりにくい音」と感じる人もいると思います。
強くピッキングをしても歪みの量があまり変わらないため、ピッキングへの追従性が良いアンプに慣れた後にこのアンプを弾くと、無意識のうちに歪ませようとピッキングが強くなってしまうことがあります。
試しにマルチエフェクターを「ID:CORE」のAUX端子に繋いてみたところ、かなり臨場感のある音が出せたので、どうしても「ID:CORE」の音が合わないけれども、手元にマルチエフェクターがあるという人は、マルチエフェクター用の良質なスピーカーとして使うという方法もあると思います。
レビューを見ると「歪みはいまいちだけど、クリーンが良い」というコメントもありましたが、私は逆で「ID:CORE」の歪みの音は気持ち良く弾けるので好きですが、クリーンはコシや粘りが少なめで悪く言えば薄っぺらい音という印象を受けました。
アンプの前にMXRのMicroampなどのブースター入れるとクリーントーンの音も太くなり気持ち良く弾けました。
歪み系の音はかなり深く歪ませることが出来るのでエフェクターを使わなくてもどんなジャンルでも行けると思いますが、気持ち良く弾ける一方で歪ませ過ぎるとミスが目立ちにくくなりピッキングやミュートが甘くなりがちなので、練習用として使う場合には歪ませ過ぎないように注意したほうが良いように思われました。
- ▲音色・エフェクトの数
次に使ってみて良かったところはまず音色の数です。
「ID:CORE」には、①CLEAN WARM、②CLEAN BRIGHT、③CRUNCH、④SUPER CRUNCH、⑤OD 1、⑥OD 2の6つのチャンネルがあり、①モジュレーション、②ディレイ、③リバーブのエフェクトを同時に使用できます。
そのため、エフェクターを使わなくとも一通りの音を出すことができます。
自宅で練習する時に、わざわざエフェクターを使うのが面倒な場合も多いと思うので、アンプ直で気軽に使えるのはやはり便利です。
- ▲PCとの連携
「ID:CORE」をPCに繋ぐと「Architect」というソフトウェアが使えるのですが、この「Architect」は1つの画面で入力チャンネル、EQ、エフェクト類の全てを操作することができ、かなり便利です。
「Architect」に入っているチューナーもかなり精度を細かく設定することが可能で、見やすくて使い勝手が良いです。
また他のユーザーが作った設定を簡単にダウンロードすることができ、「自分で音作りをするのが面倒くさい」という人も悩むことがないと思います。
さらに「Architect」にはチャンネル・EQのパネルと、エフェクトのパネルそれぞれにサイコロのボタンが付いているのですが、サイコロのボタンをクリックするとランダムで音を作ってくれます。
これが以外に便利で「音作り面倒だな~」と思った時には「サイコロを振る⇒音を出してみる」という作業を繰り返すことで、意外に簡単に自分好みの音が作れたりします。
「Architect」が便利過ぎるので私はPCを置いているラックに「ID:CORE」も一緒に設置しておいて、PCと繋ぎっぱなしにしていて、「ID:CORE」のスイッチを入れればすぐに「Architect」をオンにして使えるようにしています。
ただ、クリーンも歪み系の音も「BLACKSTAR」っぽい似たような傾向の音になりがちなので、BLACKSTARの音に馴染めない人にとっては辛いかも知れません。
- ▲「Cab Rig」
ヘッドホンや外部出力をした時に限りますが、「ID:CORE」をPCに繋ぐと「Cab Rig」というキャビネット・シミュレーターが使えます。
「Cab Rig」ではキャビネットの種類だけでなく、マイクの種類、設置方法なども変えられるので、「Cab Rig」を使うだけでも、かなりのバリエーションの音を出すことが可能です。
アンプから音を出すよりも、ヘッドホンやLINE出力で使うほうをメインとして使えるくらい、「Cab Rig」で設定できる種類は豊富です。
この「Cab Rig」を活用すれば「アンプから出てる音は良いけど、ヘッドホンを付けた時の音が気にくわない」ということが無くなりますし、ヘッドホンを付けた練習も楽しいです。
- ▲コスパが良い
私はフリマサイトで新古品を8500円くらいで買いました(しかもキャンペーン適用で7000円以下になった)。
新品でもAmazonで1万1000円くらいで売っていますね。
上記のような機能の豊富さを考えると、ちょっとしたマルチエフェクターにアンプが付いているようなものなので、マルチとアンプを合わせて1万円前後と考えると、かなりお買い得の部類だとは思います。
- ▲大きさの割に軽い
「ID:CORE」は大きさの割には軽いです。
私が買った10Wの「ID:Core V3 10」は3.7kgですが、40Wの「ID:Core V3 40」でも6kgちょっとです。
40Wの6kgのアンプというのは、なかなか他に無いように思います。
しかも裏に大きな持ち手があって運びやすい。
スタジオ練習用に30W~50Wくらいのアンプを買っても、重いと持ち運ぶのが面倒になって結局使わなくなってしまったりするんですよね。
このくらい軽いアンプであればスタジオの練習やちょっとしたライブなんかにも持ち込みやすいです。
- ▲電源スイッチがある
地味なポイントですが、「ID:CORE」には電源スイッチがあるのは、意外に重要なポイントだと思います。
自宅でギターの練習をするだけならマルチエフェクターでも出来るんですが、最近のマルチエフェクターには「電源ボタン」がないものが多いんですよね。
「電源ボタン」が無いと何が困るかというとケーブル類を繋ぎっぱなしにしておくことが出来ないんです。
たとえばZOOMの「G1 FOUR」やBOSSの「GT-1」はギターを本体に繋ぐと電源が入ってしまいますし、「G1 FOUR」に限って言えばUSBケーブルを繋いだだけでも電源が入ってしまいます。
そのため電源を切るためにはギターのシールドとUSBケーブルの両方を抜かないといけないのですが・・・この作業が面倒くさい。
ギターの練習を始めようという時もシールドを繋いで・・・USBケーブルを繋いで・・・って、「ケーブルが行方不明・・・」とかなって、練習するのが面倒になってしまったりするんですよね。
試験勉強とかもそうですが、ギターの練習のように面倒な作業は、始めるまでの労力をいかに少なくするかが重要です。
「ID:CORE」には電源スイッチがあるのでギターのシールドもUSBケーブルもAUXケーブル全部繋ぎっぱなしにしておけます。
ギターの練習をする時はスタンドからギターを取り出して「ID:CORE」のスイッチを入れるだけ。
マルチエフェクターを使って練習する時よりもずっと楽です。
- ▼悪かった点▼
- ▼ホワイトノイズ(ヒスノイズ)
使っていて最初に気になったのがホワイトノイズです。
ボリュームを「0」にしても、うっすらと「サーッ・・・」という音がずっと鳴っています。
歪み系の音を出していると気にならないのですが、小さめの音量でクリーントーンで弾いていると後ろで鳴っている「サーッ・・・」って音が気になります。
「ID:CORE」は海外で売れているようなので、「海外だと大きな音で鳴らすからホワイトノイズは気にならないのかな」とも思ったのですが、海外のレビューを見ても「ホワイトノイズが気になる」というコメントはいくつもありました。
アンプから音を出した時ほどではありませんが、ヘッドホンやLINE出力を使った場合も、「サーッ・・・」という音が鳴っています。
真空管アンプでは、このくらいのホワイトノイズがでるアンプも珍しくはないので、気にならない人は気にならないのかも知れませんが、最近のノイズが少ないアンプやオーディオ機器に慣れている人だと、結構気になるかも知れません。
- ▼本体だけではEQは操作できない
本体にはBLACKSTARで定番の「ISF」というEQが1つだけ付いてるのですが、この「ISF」は「アメリカンサウンド」と「ブリティッシュサウンド」をどの程度ミックスさせるかというツマミなので、例えば「ブリッジミュートをもっとズクズクいわせたい」というような場合や「高音域を上げてもっとギラギラさせたい」というような場合にはPCに繋ぐ必要があります。
PCに繋ぐと、Treble、Middle、Bassの他に、RESONANCE、PRESENCEも設定できるので、細かい設定は可能です。
私はPCに繋ぎっぱなしにして基本的にマウスで音を調整しているので不便は感じませんが、アンプ単体で使いたいという人にとっては使い勝手が悪いかも知れません。
ただ、自分が作った音を本体に保存できるので、一度PCに繋いで自分の気に入ったパッチを保存しておけば、後はPCに繋がないで本体から保存した音色を呼び出して使う、ということは可能です。
- ▼エフェクトの設定のしにくさ
これは慣れの問題もあると思うのですが、「ID:CORE」は、①モジュレーション、②ディレイ、③リバーブ、という3種類のエフェクトを同時に使用できる反面で、本体のパネルでは、この3つのエフェクトを同じノブで操作することになります。
具体的には
① モジュレーションを使うためには「MOD」ボタンを押して、「TYPE」と「LEVEL」のノブを回す
② ディレイを使うためには「DLY」ボタンを押して、「TYPE」と「LEVEL」のノブを回す
③ リバーブを使うためには「REV」ボタンを押して、「TYPE」と「LEVEL」のノブを回す
という感じで、実際にやってみると結構面倒なんですよね。
同じノブを使うため、パネルはすっきりとしていて良いという部分もあるのですが、最初のうちは「?」ってなるかも知れません。
ちなみにPCに繋いで「Architect」を使うと、3つのエフェクトは別項目で調整できるので分かりやすいです。
- ▼中古で買った場合にはソフトウェアが使えない可能性がある
前述のように「ID:CORE」はPCに繋いで「Architect」というソフトウェアや「Cab Rig」というキャビネット・シミュレーターを使うことで本領を発揮するような部分があるのですが、これらのソフトウェアを使うためには、ユーザー登録が必要です。
しかし、中古で買った場合、前の持ち主がすでにユーザー登録をしていると登録の際にエラーが出てきてソフトウェアを使えないということがあるようです。
なので「ID:CORE」を中古で買う場合には、前の持ち主にこの点を確認してから買ったほうが安全だと思います。
私は新古品をフリマで買ったのですが、前の持ち主がユーザー登録をしていなかったようで、本体に貼ってあるシリアルコードを入力することで無事にソフトウェアを使うことができました。
- ■良いとも悪いとも言えない点■
- ■大きさ
「ID:CORE V3 10」は、10Wのアンプの部類の中では、大きめです。
大きいというのは場所をとるという点ではデメリットですが、大きな箱鳴感があるという点ではメリットもあります。
私はもっと小さいアンプも持っているのですが、ある程度大きいほうがパネルの操作がしやすかったり、シールドを刺した時に動いたりしないので、置き場所さえ確保できればある程度の大きさがあったほうが良いかも知れません。
- ■電池駆動できない
他のメーカーの10Wのアンプは電池駆動できるものも多いのですが、「ID:CORE V3 10」は電池駆動はできません。
厳密に言えば別売りの「PB-1 POWER BANK」というパワーサプライを買うとコンセントが無くても使えるようなのですが、このパワーサプライが1万3000円くらいして、「ID:CORE V3 10」本体よりも高いです。
- ■「スーパー・ワイド・ステレオ」
「ID:CORE」シリーズは「スーパー・ワイド・ステレオ」を売りにしているようで、製品名にも「STEREO」という文字が入っていたり、本体にも「WIDE STEREO」と書かれたシールが貼ってあったりします。
しかし、2つのスピーカーの距離が近いせいか、あまりステレオ感はありません。
- ■オーディオ・インターフェイス機能
「ID:CORE」にはオーディオ・インターフェイス機能が付いてるのですが、実際に使ってみるとレイテンシーが気になります。
ASIOを入れてみてもレイテンシーが気になるレベルなのでオーディオ・インターフェイス機能はあまり期待しないほうが良いかも知れません。
ただし、他のアンプのオーディオ・インターフェイス機能もレイテンシーが気になる物は多いので、「ID:CORE」に限った問題ではないと思います。
ダイレクトモニタリング機能があれば良いんですけどね。
「ID:CORE」を買うかどうか迷っている人はデジマートのレビュー動画が分かりやすいので、これを見ると良い意味で購買意欲をそそられると思います。
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