VOXからは、低価格帯からハイエンド機まで様々なギターアンプが発売されていますが、比較的安価で購入できるアンプも多く、中古市場でも出回っている量が多いため、コスパの良いギターアンプを探している人にとっては有り難いメーカーだと思います。

一方で、VOXのアンプは種類が多くて分かりにくいので、どれを買ったら良いのか分からないという人も多いと思います。

なので、比較的安価で買えるVOXのギターアンプを整理してみたいと思います。


  • ■小さめ・格安のタイプ

  • ◆PATHFINDER 10

VOXのギターアンプの中で特に安くてコストパフォーマンスが良いのが、「PATHFINDER 10」です。



【メリット】

10Wと自宅で練習するには十分な出力で、クリーンとオーバードライブを切り替えるスイッチも付いているため比較的広いジャンルに使えます。

インテリアとして家に置いておきたくなるようなもVOXらしいフォルムで、個人的にはVOXのアンプの中でも上位に入る好きな見た目です。

またヘッドホンアウト・ラインアウト端子など最低限の便利機能が付いてるので、深夜でもヘッドホンを使うことでアンプの音色で練習することができます。

そして最大のメリットはその価格の安さです。

令和4年7月時点でAmazonで7000円で購入できますが、以前は5000円以下で新品を購入できた時期もあり、中古市場でも流通量が多く、フリマサイトなどでも格安で購入できます。



【デメリット】

最近のアンプは、AUX端子が付いていて音楽をアンプで流しながらギターの練習ができたり、PCやスマホに接続できる機能が付いてるものが多いのですが、この「PATHFINDER 10」にはそのような便利機能は付いておらず、アンプとして最低限の機能しかありません。

また、オーバードライブサウンドは出せるようになっていますが、アンプ単体ではロックやメタルで使うような激しく歪んだ音は出せないので、強めの歪みを使いたい場合には別途エフェクターを用意するか、別のモデリングアンプを用意したほうが良いです。

また、最近の10W程度の出力のアンプは電池駆動に対応していることが多いのですが、「PATHFINDER 10」は電源をコンセントに繋がないと使えないタイプなので、好きな場所に置けなかったり、野外で使えないという点はデメリットかも知れません。


  • ◆Amplug2 AC30



アンプと言って良いのか微妙なところですが、VOXの「Amplug2」は気軽に使えて、しかも安いヘッドホン専用のギターアンプです。

使い方は簡単で、ギターのジャックにこの「Amplug2」を繋いで、「Amplug2」にヘッドホン(イヤホン)を繋いで電源を入れるだけです。

ギターを弾くとヘッドホンからアンプのような音が出力されます。


【メリット】

「Amplug2」シリーズの最大のメリットは気軽に使えることです。

ギターを弾く時って準備が面倒だったりするんですが、この「Amplug2」はギターに刺しっぱなしにしておけば

① ギターを持ち上げる

② 「Amplug2」にヘッドホン(イヤホン)を繋ぐ

③ 電源入れる

という、3つの作業だけでギターの練習を開始できます。


【デメリット】

デメリットとしてはヘッドホンから出力される音が「それなり」なところです。

私もこの「Amplug2」シリーズを持っていましたが、普通のアンプやマルチエフェクターから出力される音に比べると、「おもちゃ」のような音であるように感じてしまいます。

「Amplug2」は新品で4000円前後で買えるのですが、「Amplug2」を買うのであれば、もう少しお金を出して普通のギターアンプや、安めのマルチエフェクターなどを買ったほうがコスパは良いのではないかと思います。



  • ■デジタルモデリングのシリーズ(「VX」「MINI」「CAMBRIDGE」)

VOXのギターアンプの中で、機能と価格のバランス的にコストパフォーマンスが良いと感じるのが、「VX」シリーズ、「MINI」シリーズ、「CAMBRIDGE」シリーズなどの、デジタルモデリングが使われているシリーズです。

【メリット】

これらのデジタルモデリングのシリーズでは、VOXの「AC30」をはじめとして、フェンダー、マーシャル、メサブギなど、10種類程度のアンプモデリングを使うことができるため、クリーントーンからハイゲインまで幅広いジャンルで使える音色が揃っています。


それだけでなく、モジュレーション(コーラス、フランジャー、フェイザー)、ディレイ、リバーブといった基本的なエフェクトをかけることもできるようになっています。

アンプシュミレーターの付いたマルチエフェクターとアンプが組み合わさったものと考えると分かりやすいと思います。

しかも、VOXのこのシリーズは「POWER LEVEL」というツマミを動かすことで出力をシームレスに調整できるので、自宅で小さい音で練習することも可能です。

なので、これ1台があれば自宅でもスタジオでも使うことができます。

その他、先ほどの「PATHFINDER 10」と違って、AUX端子やUSB端子が付いているので、音楽を流しながら練習をしたりすることもできますし、パソコンやスマホで細かい音色調整ができたりするのもメリットです。

なお、「VX」シリーズの多くには新世代真空管の「Nutube」が搭載されており、真空管アンプ的な雰囲気を感じられます。

ただ、私が調べた範囲では「Nutube」がどのように使われているのか分りませんでした。

おそらくプリアンプ部分に使っていると思うのですが・・・もしかしたら良くあるオーディオ機器のように真空管を通しているだけで増幅には使っていなかったりして?

VOXのデジタルモデリングのシリーズは「Nutube」が採用される前から一定程度の真空管らしさは表現されていたので、今回「Nutube」が採用されたことによって、どれだけ真空管らしさがアップしたかというと良く分らないというのが使っていても良く分らない、というのが正直なところです。

ちなみに後述の「MV50」のシリーズは「Nutube」がプリ・アンプに搭載されていると明記されており、もはや従来の真空管アンプはいらないのではないかと思わせてくれるくらい、出来が良いです。

以下、VOXのデジタルモデリングが使われているシリーズである「VX」シリーズ、「CAMBRIDGE」シリーズ、「MINI」シリーズに分けて、それぞれの特徴を見ていきたいと思います。


  • ◆「VX」シリーズ

VOXのデジタルモデリングのアンプの中でかなり売れているのが「VX」シリーズです。



  • 【メリット】

「VX」シリーズの最大のメリットは「軽くてコンパクト」です。

VOX以外でも「コンパクトで軽い」アンプはいくつかあるのですが、スタジオでも使える出力と「コンパクトで軽い」というメリットを両立しているアンプは珍しいです。

VOXの「VX50GTV」は50Wでありながら、「35.4cm×20.8cm×313cm」とコンパクトで、重さは驚異のたった4.1kgです。

出力があって軽くてコンパクトなギターアンプとしては、ZT AMPの「Lunchbox」シリーズや、BLACKSTAR の「ID:CORE」シリーズなどがありますが、「Lunchbox」はVOXよりもかなり高めの値段設定ですし、BLACKSTAR の「ID:CORE」は40Wのタイプでも「VX50GTV」よりも大きくて重い(43.4cm×33.6cm×18.5cm、6.2kg)です。

なので「コンパクトで軽くて出力もある」ギターアンプとしては、この「VX」シリーズが最も価格とのバランスが良い思います。

私も以前はスタジオの練習やライブにギターアンプを持っていっていたことはあるのですが、大きくて重いと持ち運びが面倒になって結局使わずに宝の持ち腐れ状態になることが多いんですよね。

「VX」シリーズくらいの大きさと重さならばエフェクターと一緒に気軽に持ち運べるレベルなので、かなり楽だと思います。




  • 【デメリット】

「VX」シリーズのデメリットは、アンプが軽い分、音もプラスチック感のある軽めの音がします。

ただ、バスレフ構造を採用することで低音も十分に出るように工夫されているので、音が悪とか迫力が無いといということではなく、好みの問題かなと思います。

個人的にはBLACKSTAR の「ID:CORE」シリーズもそうですが、「VX」シリーズの軽い感じのアンプの出音は嫌いではないです。


その他に個人的に「VX」シリーズのデメリットと感じるのは見た目です。

VOXのアンプは見た目が格好良いものが多いのですが、「VX」シリーズの見た目は「おもちゃ」っぽく、安そうな印象を与えてしまうかも知れません。

見た目が気になるのであれば、後述の「CAMBRIDGE」などのほうがベターだと思います。


その他、「VX」シリーズは今でもそれなりに人気があるので中古市場でも価格が下がりにくいのもデメリットかも知れません(使わなくなったら高く売れる可能性があるという点ではメリットなのですが)。

「VX」シリーズは、過去にも「VX II」等のアンプが販売されているのですが、こちらは型落ちということもあり、タイミングが合えばフリマサイトなどで6000円前後で入手できるので、「軽くてコンパクトで出力のあるアンプが欲しいけど、お金がない」という人はこちらも選択肢に入れても良いかも知れません。




  • ◆「CAMBRIDGE」シリーズ

「VX」シリーズよりも一回り大きく、やや重いアンプが「CAMBRIDGE」シリーズです。



50Wタイプの「CAMBRIDGE50」というアンプは、「VX」シリーズの「VX50GTV」よりも後に発売されており、参考価格も「CAMBRIDGE50」のほうが高いので、「CAMBRIDGE」が「VX」よりも上位機種という扱いになっているのだと思われます。

しかし、実際には「VX」シリーズに比べると「CAMBRIDGE」シリーズはそれ程売れていないようで、Amazonなどの価格を見ると「CAMBRIDGE」シリーズのほうが安かったりします(一時期1万3000円以下で新品が販売されていたこともあるようです)。

中古でも「CAMBRIDGE50」シリーズのほうが相場が安く、運が良ければフリマサイトで1万円以下で入手できると思います。



【メリット】

「CAMBRIDGE50」のメリットは「VX」シリーズよりもスピーカーのサイズが大きく、ボディも重いため、アンプらしいしっかりとした音が出るところです。

また参考価格が3万6000円程度で海外でも同じくらいの価格で販売されているにもかかわらず、国内であればその半額以下で価格で入手できるので(2022年7月現在)、コストパフォーマンスに優れていると思います。

また見た目もVOXらしいシックな雰囲気で、「VX」シリーズのような安っぽい雰囲気もあまりありません。


【デメリット】

デメリットと言って良いのか微妙なところですが、「CAMBRIDGE50」は「VX」シリーズよりも大きく、重いです。

とは言っても大きさは「45.2cm×24.0cm×41.0cm」、重さは8.9kgと、50Wの出力があることを考えるとコンパクトで軽めの部類なのですが、「VX」シリーズがもっとコンパクトで軽いため、相対的に「CAMBRIDGE50」の大きさと重さが目立ってしまっている部分はあると思います。

「CAMBRIDGE50」よりも「VX」シリーズのほうが売れているのは、「同じ出力なら、よりコンパクトで軽いほうが良い」と考えている人が多いからではないかと思われます。



  • ◆「MINI」シリーズ

「CAMBRIDGE50」の後継機種にあたるのが、「MINI」シリーズです。



【メリット】

50Wの「CAMBRIDGE50」と「MINI GO 50」を比較すると、「MINI GO 50」のほうが「39.0cm×25.0cm×35.8cm」「7.3kg」と、やや小さく軽くなっています。

重さも軽いけど音も軽めの「VX」シリーズと、音はしっかりとしているけれどもやや大きくて重めの「CAMBRIDGE」の中間に位置する、バランスのとれたモデルだと思います。

その他、「VX」や「CAMBRIDGE」シリーズと異なり、「MINI GO 50」には、リズムマシンやルーパーといった、最近流行の便利機能が搭載されています。



【デメリット】

デメリットと言って良いのか微妙なところですが、「MINI」シリーズは「VX」や「CAMBRIDGE」よりも後に販売されたモデルなので価格が高めです。

VOXの低価格帯のアンプは次々と新商品が発売されるので、やや人気がないモデルや、型落ちになったモデルは一気に価格が下がり、かなりのお買い得価格で購入できることがあります。

2022年7月現在では「MINI」シリーズは比較的新しい商品ということもあり、価格はまだそれほど下がっていません。

また、「VX」や「CAMBRIDGE」と異なり、「MINI」シリーズには新世代真空管のNutubeが搭載されていません。

ただ、個人的にはNutubeが搭載されている「VX」や「CAMBRIDGE」を弾いてみてもNutubeがどのように貢献しているのか分りにくいと感じたので、「Nutubeの実力を感じたい」という人は、Nutubeが全面的に売りになっている「MV50」シリーズのほうが良いと思います。



  • ■NUTUBEが売りの「MV50」シリーズ

Nutubeの良さが実感できるということで良く売れているのがアンプヘッドタイプの「MV50」シリーズです。




【メリット】

「MV50」シリーズは、公式のウェブサイトで「新真空管Nutubeをプリ・アンプに搭載」と明記されているとおり、Nutubeで音を増幅させています。(パワーアンプはNutubeではありません。)

またパーツがアナログ素子で構成されているため、本格的な真空管アンプに近い音がします。

しかも、アンプヘッド単体だけで見ると「13.5cm×7.5cm×10.0cm」、「540g」と非常にコンパクトで軽く、それにもかかわらず50Wとスタジオでも使える十分な出力を持っています。


【デメリット】

「MV50」シリーズのデメリットとしては、アンプヘッドタイプなので、別にキャビネットを用意する必要があるということです。

「MV50」シリーズ用のキャビネットとしては「BC108」と「BC112」というモデルが用意されています。





「BC108」は「26cm×28cm×20cm」「3.9kg」と軽くてコンパクトなのですが出力が25Wなので、スタジオやライブで使う場合には出力が少し足りない可能性があります。

「BC108」は2台並列で繋げることができるようになっているので、「BC108」を2台用意すればスタジオでも十分な音量は確保できます。

ただ、小さいとはいえ、スタジオにアンプヘッド1個とキャビネット2台を持っていってセッティングするのは、少し面倒です。

「BC112」のほうは出力が70Wと十分なのですが、13.6kgとやや重めなので持ち運びは少し大変かも知れません。

自宅ではコンパクトな「BC108」を使い、スタジオやライブではその場所にあるキャビネットを利用する等の工夫が必要になってくるかも知れません。


その他、「MV50」シリーズのデメリットと言って良いのか微妙なところですが、先ほどのデジタルモデリングのシリーズは1台で様々な音が出せたのに対し、「MV50」シリーズは1個につき1種類の音しか出ません。

「AC30の音を出したいならMV50 AC」「クリーントーンを出したいならMV50 CLEAN」「ハイゲインを出したいならMV50 HIGH GAIN」を・・・と、出したい音色ごとに「MV50」シリーズを買う必要があるのですが、この点は「MV50 AC」か「MV50 CLEAN」を買った上で歪み系の音は別にペダルを用意することでも対応できますし、「MV50」シリーズを何種類か揃えて気分や曲によって付け替えるのが楽しいという人もいると思います。


個人的には「MV50」シリーズは自宅で気軽に真空管アンプの音を楽しみたいという人に向いていると思います。

楽器屋さんなどで実際に試奏をしてみると売れている理由が良く分ると思います。