PCやDAW向けのアンプシミュレーターは、ギタリストにとって非常に重要なツールです
アンプシミュレーターを使用することでリアルなアンプのサウンドを再現し、簡単にレコーディングの音質を向上させることができます
◆アンプシミュレーターとは何か?
アンプシミュレーターは、ギターなどの音をデジタル的に処理し、リアルなアンプのサウンドをシミュレーションするツールです
プラグインをパソコンに入れることで実機のアンプやエフェクトユニットを持たなくても高品質なサウンドを簡単に得ることができます
◆パソコン上でアンプシミュレーターを使うメリット
- コスト削減:
アンプシミュレーターはコストパフォーマンスに優れており、高価な実機のアンプと比較して経済的です。 - 場所をとらない、騒音問題を解決できる:
ソフトウェアのアンプシミュレーターはコンパクトで、騒音の心配もありません。 - 様々なアンプモデルを簡単に試せる:
幻のアンプや伝説的なアンプを簡単にシミュレートできます。 - 誰でも高音質を出せる、簡単に録音できる:
ギタリストの経験レベルに関係なく、高品質な音を録音できます。
◆アンプシミュレーターのデメリット
- レイテンシーの問題:
アンプシミュレーターはレイテンシーを引き起こす可能性がありますが、高性能なハードウェアで対処できます。 - パソコン、オーディオインターフェイス(場合によってはDAW)が必要:
PCとオーディオインターフェイスが必要です - スタジオやライブでは使いづらい:
音を出すためにPCが必要になるのでスタジオやライブでの使用には向いていません - 実機と全く同じ音は出ない:
アンプシミュレーターはシミュレーションであり入力の大きさなどの関係で実機とは微妙に異なるサウンドになることが多いです
◆無料のアンプシミュレーター(プラグイン)
Emissary Bundle(Ignite Amps- Emissary2.0 + Nad IR)(STL Tones)
「Ignite Amps- Emissary2.0」というアンプヘッド部分のシミュレーターと「Nad IR」というキャビネットシミュレーター(IRローダー)が入ってます
「Nad IR」の使い勝手が良いのでとりあえず先に入れておくと便利だと思います
Amp Locker(Audio Assault)
プレキシ・マーシャルを元にしたアンプシミュレーターのようです
アンプ単体でクリーンからクランチまでは出せますがアンプ単体で強い歪みは作れないためハイゲインを出すためには付属の歪み系のペダルを使う必要があります
個人的にはキャビネットはオフにして、Nad IRでサードパーティの派手目なIR(faIR Post Grungeなど)を使ったほうがマーシャルっぽいギラギラ感が出て好きでした
Cypress TT-15(Black Rooster Audio)
OrangeのTiny Terror(楽器屋さんに良く置いてある可愛らしいオレンジのヘッドアンプ)のモデリングのようです
Black Rooster Audioが有名なメーカーみたいで音は良いと思います
Orangeのアンプなので歪ませ過ぎると音の輪郭がなくなって何を弾いているのかわかりにくくなりやすいかも知れません
キャビネットはオフにしてNad IRでサードパーティのIRを使ったほうが音作りはしやすいと思います
LE456、HyBrit Head、LeCto、LeGion、LeXtac(LePou Plugins)
あまり聞いたことのないメーカーですが無料で色々なアンプヘッドのシミュレーターが配布されています
LE456 ⇒ ENGL(たぶん)
LeCto ⇒ Mesa Boogie Triple Rectifier
LeGion ⇒ オリジナル?
LeXtac ⇒ DIEZEL(たぶん)
キャビネットシュミレーターが付いていないのでNad IRなどを併用する必要があります
サイトへのリンク
7170 / 8505(Nick Crow Lab)
見た目から5150のシミュレーターだと思います
古いプラグインなのか強めにコンプレッサーをかけたような音になることもありますが相性の良いIRと組み合わせることで良い感じの音を作れると思います
個人的には好きな音です
neurotube(audiosingularity)
SoldanoのSLO-100とLaneyのTF-300というアンプのシミュレーターです
Soldanoのシミュレーターは高域がシャリシャリとしているものが多いですが、このneurotubeのSoldanoは素直な出音で他の楽器の音と混ぜても溶けて無くなる感じもないので扱いやすいと思います
TF-300のほうは「こもった」ような音で個人的には使いづらいなと思いましたが上手い人であれば使いこなせると思います
5034 Fluff (ML Sound Lab)
ML Sound Labの「Amped Roots」というプラグインには4つのアンプモデルが入っていて、そのうち「5034 Fluff」というアンプが無料で使えるようになっています
自分のPC(Intel Core i5-9400F)の場合CPUの40%くらいを持っていかれるので負荷は重いほうだと思いますが複数のトラックに挿しても音切れ等はありませんでした
負荷が重い分ぱっと聞いて分かるくらい音が良いですが重厚で荒れた感じの特徴的な音色なのでジャンルや好みを選ぶかも知れません
ノイズゲート、コンプ、歪みペダル、コーラス、ディレイ、リバーブといったペダルのプラグインも含まれています。
DJENT GOD(ML Sound Lab)
「5034 Fluff」と同じML Sound Labというメーカーのプラグインで「Amped Stevie T」というプラグインに入っているアンプモデルのうち「DJENT GOD」というアンプが無料で使えるようになっています
CPU負荷は重めですが「5034 Fluff」よりは軽いです
音は良いですが少し「こもった」ような特徴的な音なので相性の合う合わないがあると思います
これにもノイズゲート、歪みペダル、ディレイ、リバーブなどのペダルのプラグインが含まれています
TONEX(IK Multimedia)
ToneXはKemperのように実機のサウンドをキャプチャして再現できるプラグインでプラグイン版Kemper的なコンセプトの製品です
無料版だと20種類程度のトーンモデル(Kemperでいうリグ)が使えます
iPad用のプラグインもあるみたいです
最近ではToneX用の実機のペダルが海外で売れているみたいで、実機を買うとToneXのプラグインのフルバージョンも付いてくるみたいです
個人的にはAmplitubeとあまり変わらないな・・・という印象もありました
Amplitube(IK Multimedia)
TONEXと同じメーカーで、こちらも無料版があります
IK Multimediaのバンドル製品を買うとAmplitubeの上位版が付いてくるので私は「MAX」という全部入りのバージョンを使っています
キャビネットシミュレーターが「もっさり」としている印象がありますがオケに馴染みやすくてミックスで考えることが少なくて済むのは楽なので使うことが多いです
Brainworx bx_rockrack V3(Plugin Alliance)
有料版と無料版があり、無料版の場合にはパラメーター(ゲインやEQ)を調整することはできず、プリセット(20個くらい)を選んで使うことになります
キャビネットシミュレーター(IR)の音が「もっさり」としていたのとリバーブやディレイが強めのプリセットが多くて個人的には使いづらいな・・・と思いました
無料版だとIRの差し替えもできないようです
◆無料のエフェクター(ペダル)のプラグイン
DR DRIVE(Audiority)
HORIZON DEVICESの「Precision Drive」というペダルのモデリングみたいです
ハイゲイン用途でも使えますしドライブを低めにしてクリーン系でも使えます
THE PRINCE(GutarML)
通すだけで音が良くなったような気がする不思議なペダルのプラグインです
配布サイトには「ニューラルネットワークを使ったトランスペアレント系のペダルです」的なことが書いてあって今流行りのAI技術を使っているようですが難しいことは分かりません
TSB-1 Tyrant Screamer、TS-999 SubScreamer(STL Tones)
Greed Smasher、TSC(mercuriall)
Greed Smasher ⇒ GRID SLAMMER(Mesa Boogie)
TSC ⇒ TS-808
「GRID SLAMMER」のモデリングは珍しいので貴重な存在だと思います
mercuriallのサイトでは、他にもMT-2(メタルゾーン)、コーラスペダルのモデリングなどが無料配布されています
JCM800のモデリングなども配布されていましたが古い規格のものは私の環境では読み込めませんでした
◆おすすめの有料のアンプシミュレーター
最近の無料のアンプシミュレーターはクオリティが高いので無料のシミュレーターを組み合わせるだけでも十分に良い音を出すことができます
もっとも有料のシミュレーターの中にも素晴らしいものがありますので、個人的に好きな有料のシミュレーターを少しだけ挙げておきたいと思います
SS-11X(Mercuriall)
安くて音が良いです(現在は2500円くらい。円安になる前は1600円くらい?)
Mercuriallは海外の掲示板サイトなどを見てると名前が出てくることが多いので海外だと人気なのかも知れません
AMT ElectronicsのSS-11AとSS-11Bというペダル型の真空管プリアンプをモデリングしたシミュレーターのようですが大きめのヘッドアンプを通したようなしっかりとした音が出ます
真空管(プリアンプのミニチュア管の部分)は12AX7と6N2P-EVから選べるようになっています
プリアンプの他にノイズゲート、歪系ペダル(TS-808、TS-808Mod、TS-7、TS-7 Mod、Grid Slammer)が付いています
海外の掲示板サイトで「パワーアンプのシミュレーターが入っていないのではないか」という話題になったスレにメーカーの人が登場して「キャビネットシュミレーターのIRの中にパワーアンプのIRも含まれているので問題はない」という感じの回答していました
ただ「SS-11X」のキャビネットシュミレーターをオフにして、パワーアンプシミュレータ(Ignite Amps のTPA-1など)と、IRローダープラグイン(Nad IRなど)を使ったほうが良い感じになるようです
Ignite Amps のTPA-1の配布サイトは複数あり、私の環境では片方は音が出ない、もう片方は音が出るという感じでした
うろ覚えですがIgnite Ampsの↓のサイトから落とすのが正解だったような気がします
Neural DSPのプラグイン
Neural DSP はQuad Cortexを販売しているメーカーで(オーディオ的には)一番音が綺麗だと思います
どのモデルも歪ませてコードを鳴らした時の音の分離が綺麗です
音が良い分、価格も割高でCPU負荷も大きいです
メタル系のアンプが多くハムバッカーに合いそうなものが多いですが「Nolly」「Plini」「Abasi」あたりはロックやポップスでも使えると思います
(ただ Pliniは負荷がかなり重く私の環境ではDAWのプロジェクト内ではまともに動きませんでした)
クリーンからクランチしか使わないであれば「Tone King Imperial MKII」なども良いと思います
メーカーサイトにあるYoutubeの演奏音源はほとんど参考にならないのと、無料で一定期間トライアルできるので、買う場合には実際に自分で使って試してみたほうが良いかと思います
公式サイトへのリンク
Guitar Rig(Native Instruments)
Native Instrumentsの他の製品と同様に使い勝手は良くないですがNad IRでサードパーティのIRを使うと音は意外に良い感じでした
Native InstrumentsのKOMPLETというバンドル買うとGuitar Rigが入っています
そのためDTMをやっている人だと「いつのまにかPCに入っていたけど使っていない」というパターンも多いと思うので手元にある場合いはこちらも試してみると良いかも知れません
空間系やインパクトの強いエフェクトが充実しているので飛び道具的な音を作りたい場合や効果音を作りたい場合にも便利かも知れません
ぱっと見た感じでは分かりにくいですがMarshalのJCM800、RolandのJC120、Fender TWIN REVERB、5150など様々なアンプのシミュレーターが入っていて中身も充実しています
↓ 比較動画です
コメント